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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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ご質問の真意がよくわかりませんが、ずいぶん遠いところまできたな、と感慨深いのはDX革命とそれにまつわるインターネットでしょうか。アナログの時代も知っている身としては後戻りできない遠いところまできてしまった感があります。

そもそもインターネットが「悪意」というパンドラの箱を開けたせいか、「悪意」が可視化され、それへの対策としてWEB3が現在ささやかれています。これは、悪用とのイタチごっこなので、終わりの見えない、こう着状態の戦いといえます。

また、ChatGPTの登場を大騒ぎしている現状も、とうとう「デジタル(AI)疲れ」がきたのかなというような印象です。いちばん危惧することは「考える」ことをAIにまかせてしまうことです。

「生きる」ということはもともと効率の悪いことです。無駄なことをいっぱいすることで「生きがい」が生まれたりします。「考える」ことも効率が悪そうですが、それをAIなんかにまかせるなんてみずから楽しみを放棄することではないでしょうか。ともかく、もう十分遠いところまできたのだから、そろそろゆっくりしようや、という気分です。とりとめもなく書いてしまいました。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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自分の知りたい情報しか必要としない人のなれの果てがプーチン大統領やトランプ前大統領でしょうか。いまや「もうひとつの『事実』」の蔓延が当たり前となっています。「客観的事実」なんてもはや死語です。情報が紙からWEBに全面的に移行しそうな現在、こうしたプーチン類似人間の増加はもっと加速するでしょう。ウェブメディアには、崩壊寸前の「客観的事実」の復活を望みます。オルテガのことば「過去はわれわれになにをすべきかは教えてくれないが、なにをしてはならないかは教えてくれる」を噛み締めつつ、21世紀になってからの変化の激しい20数年のできごとを振り返ってみるのもよいでしょう。

松田行正 グラフィックデザイナー

マツダオフィス、牛若丸出版主宰。1948年生まれ。数多くの書籍のデザインを手掛けると同時に、デザインの歴史探偵を名乗り、デザイン史の研究・執筆に励んでいる。