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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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1989年秋、西ベルリンに短期の語学留学の際、ユーラシア大陸を横切った2週間である(ヨーゼフ・ボイスの「ユーラシア」を念頭に)。10月に事件から4ヶ月後の北京・天安門広場を訪れた後、列車に乗り、ウラン・ウデでシベリア鉄道に乗り換え、ウランバートル、イルクーツク、モスクワ、ワルシャワに立ち寄り東ベルリンに到着した(西ベルリンに到着した2週間後に、ベルリンの壁が崩壊)。ソ連の崩壊が遠くないと感じたための経路だが、延々と続く白樺の平原、車内で出会ったソ連、中国やベトナムの人々、移動の中で時差が変化していく実感などなど思い出深い。

日本と西欧の間にある広大な共産圏...…近くにありながら情報がなく「遠い」存在であった地域への一人旅は、1984年の中国以来、近年のサハリン、カムチャツカ半島やロシア極東部を含め続けてきた。そのような中、シベリア鉄道の2週間と対になるものとして認識したのが、2020年12月台北のホテルの一室での2週間の隔離である。情報的にはアクティブでありながら、物理的な移動がない特殊な体験だった。通信環境から隔絶され、情報的に自身の存在が消えていたシベリア鉄道の2週間と、入国しても生体的に社会に出られない、物理的に存在が閉ざされた台北での隔離の2週間。いずれも世間や社会から離れ、宙吊り的な場所と時間──どこか遠く──に自身が存在した実感は、今も忘れられない。     

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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回答なし

四方幸子 エコゾファー

「対話と創造の森」アーティスティックディレクター、美術評論家連盟会長。1958年生まれ。データ、水、人、動植物、気象など「情報の流れ」から、アート、自然・人文科学を横断するキュレーションや執筆活動を行うかたわら、ざまざまな大学で教鞭をとっている。写真:新津保建秀