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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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ウェルビーイングとは、その語の構成のとおり、「well=よい、よく」と「being=存在、いる・ある」が組み合わされた概念です。様々な解釈がありますが、シンプルに訳すと「よいあり方」。この訳は、私が今まで関わってきた「触覚の研究」の中で、たびたび問うてきたことと深い関わりがあります。

人が生物の一種として、社会的な存在として、「よいあり方」とはどのようなものなのか? 生物は、一見動いていなくても、常にエネルギーのやり取りを続けています。触れるということは、その対象の存在自体を価値として感じることだと言えます。また、人や社会は、何らかの目標を達成したら終わるものではなく、その構成要素が活動し続ける限り続くものです。そして、活動を続けるためには、関わりのルール自体を自ら変容させていくことが求められます。別の言い方をすると、世界を感じ関わるの中で、自らの生かされ方を見つけていくことが必要ということです。

そのような意味で、世界の肌触りを感じる実感や解像度、解釈の選択肢の変化自体が“誘うもの”であり、それが変わり続ける限り、私はどこかへ誘われ続けるのでしょう。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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私は、広い意味での「編集」とは、何らかの価値基準で形式(フォーマット)を決め、そこに素材を入れて並べて、文脈(コンテクスト)を作ることだと思っています。一つひとつとして見た時には、一つの意味しかなかった素材が、別の素材とうまく並べられることで、そこに差異(コントラスト)や抑揚(テンション)が生じ、一つのメッセージとなるのです。私は、そんなメディアに出会ったとき、それが示す向こうの世界の広がりに希望を感じますし、そこでは自分や世界の存在を信じてよいという高揚感が生まれます。その時、できれば一つではない希望や高揚感のあり方が提示されるとよいなと思います。

渡邊淳司 研究者

NTTコミュニケーション科学基礎研究所人間情報研究部上席特別研究員。人間の触覚のメカニズムやコミュニケーションに関する研究をはじめ、ウェルビーイングな社会を実現する方法論について探究している。