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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?
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子ども、とりわけ小さな子どもの存在です。自分の子であるか否かを問わず、小さな子どもの姿、ふるまい、表情すべてが、かつて私たち(大人)がいた一方で今では遠く離れてしまいほとんど忘れ去られてしまっているところへと、瞬時に心を接続してくれます。
たとえば、通勤途中の住宅街でこんなことがありました。4、5歳の子どもが歩道にうずくまって何かをじっと見ていました。母親が促しても立ち上がろうとしません。親子を通り過ぎたときにわかったのですが、子どもが見ていたのは大きな青虫でした。子どもは母親に、この青虫は何になるのか、ここにいたら潰されるのではないか、などいろいろ訊いていたのでしょうが、母親は立ってスマホを見ながら適当に相槌を打っていました。あの子はきっと青虫と話をしていたのでしょう。人間ならざるものとの生き生きとした相互交流を愉しむ日常、それはかつての私の日常でもあったし、きっと大多数の人にとってもそうだと思うのですが、そこからいかに遠く離れてしまったかと実感しました。
また、小さな子どもの姿それ自体が、生命の造形美を感じさせます。人間ならざるものとの相互交流は、言い換えれば〈いのちの絡まり合い〉であり、そうした原初のいのちのほうへと小さな子どもは誘ってくれます。長くなってしまうのでご参考までに申し上げますと、そのあたりのことは現代美術家・大小島真木さんの作品をめぐる小文に書きました。
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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?
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学生など身近にいる若者と接して思うのですが、進歩の物語が終わった後に生まれた若者たちには、進歩史観から抜けきれない私のような世代にはない発想があります。しかし、かれらの言葉は私たちにはなかなか届かない、というか、上の世代は若者の声を聞くとか言いながら、真剣に耳を傾けようとはしていない。異なる世代が耳を傾け合い、よりよい未来に向けて互いに思考を再調整する、そのような現場をウェブメディアに期待します!
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結城正美 アメリカ文学・環境文学研究者
アメリカ文学・環境文学研究者。青山学院大学教授。1969年生まれ。人間と環境との関係をめぐる文学研究「エコクリティシズム」を専門としている。