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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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とても難しい質問です。

もちろん、知らない世界や、知らないものやこと、人を目撃した時に感じる「遠さ」もありますが、最も遠くへ誘ってくれたのは、もしかするととても近しい人々(家族や友人)かもしれません。

とても近いと感じている人々の中に、想像もしていなかった思想や態度を発見した時に、これほど近くにある身体の中に私の知らない世界が広がっているのか、と驚愕することがあります。

もう亡くなりましたが、祖父の死後、祖母に彼氏が出来たことがありました。80代のカップルがツーショットの写真を撮って、携帯電話の待受にしている。私は祖母を「おばあちゃん」という視点で見てきたので、彼女の中に(当然)ある女性性というものに驚き、複雑な心境になったことを覚えています。私にとっての「おばあちゃん」から、ある一人の女性へと距離がサーっと遠のくような感覚があります。自分が如何に自分中心の視点で周りの人を見てきたか、ドキッとします。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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知らないことを、まるで知っているように錯覚してしまうほどに、様々な情報をキャッチすることができるようになりました。それが普通になってきた。とても便利で、視野が広がった気になる。

ただ、これは、誰が誰に聞いて書いているのだろう、と感じることや、ある思想を植え付けて行くように発信される言葉たちに危険性を感じることがあります。

受け取り側の問題かと思いますが、それを正解だと思わないでいられるものであればいいと思います。または、自分でそこから考えられるもの。

倉田翠 演出家・ダンサー

akakilike主宰。1987年生まれ。作品ごとに自身や他者と向かい合い、そこに生じる事象を舞台構造を使ってフィクションとして立ち上がらせることで「ダンス」の可能性を探求している。写真:©遠藤文香