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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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2007年あたりにマレーシア北部の島でダイビングライセンスを取得してから、水面化にそれはもう広大な生物たちの世界があることを知った。その時から海への誘いは年々強烈になり、昨年は東京なのに到達まで時間がかかることから「一番遠い日本」といわれる小笠原諸島へ行った。小笠原の海の青さはフィクションのようだった。もちろんファンタジーやSFなどの創作の世界も遠く異世界へ誘ってくれるし、科学の知識も目眩をもたらしてくれるのだけれども、今しかない海の環境と生物たちとの一期一会の出会いは、自分の命をリスクに晒しても私を海に引き戻していく。生物として遥か昔に分岐したはずの彼らが何を見て感じ、どのような関係性をもってそこにいるのか、その観察をしている時、自分が無意識に彼らを擬態しようとしていることに気づく、その時私はすこし人間から離れて異種の生物になったような錯覚をする。もちろん私の体は水中では不自由でとても脆弱なのだけれども。異なる価値観や知性の存在をすこしでも体感したくて、また私は海に戻る。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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私たちの世界を広げてくれるような、マニアックな記事の掲載を期待している。

長谷川愛 アーティスト

慶應義塾大学理工学部准教授。バイオアートやスペキュラティヴ・デザインなどの手法によって、生物学的課題や科学技術の進歩をモチーフに、現代社会に潜む諸問題を掘り出す作品を発表している。