q

あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

a

どんな経験であれ、自分にその意識と意思があれば、遠くまで誘われることは可能だと思います。読書、コンサート、人との対話、恋愛、旅行……。何かの匂いを嗅ぐという単純な行為でさえ、人を思いもかけないほど遠くに連れて行ってくれることはできるのです。重要なのは、その体験を、どのように、人と共有可能なものにするか、ではないでしょうか。人が遠くに誘われた体験を、言葉や音楽、対話や料理を作ることなどで、誰かと分かち合うことで、遠くへ伸ばされた手はさらに多くの人と繋がり、新たに遠くへの経験を可能にするのではないかと思っています。

q

既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

a

私は作家ですが翻訳家でもありますので、他言語でのオープンで活発なコミュニケーションが可能なプラットフォームがあればと思います。もちろん今でもあるのかもしれませんが、共通言語を例えばその時に英語にしてしまうのではなく、多言語の人が、多言語のままにコミュニケートできるような場所は可能なのか。夢のような考えかもしれませんが、様々な文字と言語が行き交うメディアがあったらさぞかし楽しいだろうと考えています。

関口涼子 作家、詩人、翻訳家

1970年生まれ。パリ在住、フランス語と日本語で創作、また翻訳を行っている。写真:©リオネル・ベカ