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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?
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おそらく小学3年に地元にある聴者の学校に入った時です。前からドラマや映画などで聴者たちが、相手がいないのに声だけでやりとりしている(電話で話している)のをとても不思議に思っていました。私にとってのファンタジーでした。それがろう学校から地元の学校に転入したことで現実になりました。
私と同じ歳の子たちが、見えない声に対して見えない声で反応している。そのやりとりを実際に目の当たりにした私は「異世界に来た」と奇妙な気持になっていたように思います。あの感覚を今でも覚えています。そこにある聴文化の何もかもが、私にとっての新鮮な体験でした。
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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?
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ラベルという言語化に支配されていること。文字を打っている今も、私の頭の中にある思考をうまくラベルに落とせずに苦しんでいます。ラベルから解放された、空間/感覚的な設計がなされたメディアが出てくるのを期待しています。
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牧原依里 映画作家
東京国際ろう映画祭代表、一般社団法人日本ろう芸術協会 代表理事。1986年生まれ。視覚と日本手話を中心とする自分の身体感覚を通した表現を実践しつつ、ろう・難聴当事者の芸術に関わる人材育成と、ろう者と聴者が集う場のコミュニティづくりに努めている。