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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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これまで私を「遠く」に駆り立てたものはいろいろある。子どものころに田舎で見た夜空を埋め尽くさんばかりの、いまにもこぼれてきそうな星々に遠い宇宙を夢見た。8歳か9歳のころに読んだ手塚治虫の『火の鳥』では、古代から30世紀の未来を行き来する壮大なスケールの物語に魅了された。10歳のころに観た、10年目のリヴァイヴァル上映だった(ということは後で知った)「2001年宇宙の旅」で体験したスターゲート。物語はまだ小学生には難解だった。中学生のころに知ったダダ、マルセル・デュシャン、アンディ・ウォーホル、といったアーティストやその作品は、ブライアン・イーノ、デヴィッド・ボウイ経由で私の意識を大きく変えた。そして、そうしたものへの憧憬が、いまでも私をより「遠く」へ志向させる。空間の移動ではない、意識の変化によってどこまで「遠く」に行けるのか。しかし、あの地球が宇宙に浮かぶ惑星であることを体感させられた、子どものころに見た夜空を、誰もが日常的に見られるのなら、私たちの意識はもっともっと「遠く」に行けそうだな、と思い出している。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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ウェブという形式(技術的にも、経済的にも)に条件づけられた、ある種の均質化したコンテンツにそろそろ食傷気味であるので、なにかそれを超えられないか。

畠中実 学芸員

NTT インターコミュニケーション・センター [ICC] 主任学芸員。1968年生まれ。1996年の開館準備よりICCに携わり、サウンドアートやメディアアートを中心に、多数の企画展を手掛ける。