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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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対象から最も遠い位置にカメラを置くのが、私にとっては風景を撮影するときです。そして、人をカメラで追いかけていくうちに、時には撮影を始めてから何年も経って、一番最後に訪れる変化が、風景の撮影でもあると感じています。

どう変わっていくのか、うまく説明ができないのですが、誰かが見ているかのように、その土地の風景を映せる地点に立っている、と感じるときがやってきます。狙って撮れるようになるものでもなく、歩いていてバッタリとか、素材を見返しながら出会うとか、ほとんどが偶然です。

なのに、撮影の初期にはそういった風景が映っていることは少ないのです。風景から他者の眼差しを感じれた時、私は最も遠くの距離に誘われているように感じます。私がそう捉えた風景ほど、観る人へ映像が届いた時、まったく違う場所、時間、記憶とも重なっていくのだと知っていきました。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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本アンケートの依頼文のなかに、コロナ禍において「物理的なつながりの代わりに、インターネットが人々をより密に結びつけることが期待されましたが、実際には、すでに社会に生じていた亀裂をより露わにしたように思う」という文言がありましたが、その問題意識に共感しました。

振り返ってみると、実生活や仕事の中でも、すごく近い人でも、遠い人でもない、中距離にいた人たちとの関わりが希薄になり、なくなって楽になった部分もありますが、その危うさも感じています。わざわざ積極的には繋がらないようなことや、聞いてみようと思わないような他者の言葉に触れられる、そういうメディアも必要なのかもしれないと感じています。

小森はるか 映像作家

1989年生まれ。2011年以降、岩手県陸前高田市や東北各地で、人々の語りと風景の記録から映像制作を続ける。瀬尾夏美(画家・作家)とのアートユニットやNOOK(のおく)のメンバーとしても活動している。