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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?
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詩です。詩は、この現実を現実のままに、この感情をこの感情のままに、まったく別の世界へと誘ってくれました。詩の言葉は、どこかここではない遠くの場所に連れ去ってくれるのではなく、この場所にいながらにしてここを最も遠い場所にしてくれる。詩人ゲーテは、夕映えの光に厳かなる念を託し、恋人のゆく道に美しい春の花を撒き、見栄えもしない緑の葉の冠に名誉を与えるのが詩人の力だと言いました。
詩的言語は、人類がはじめて獲得した世界のヴァーチャリティを到来させる、人間の秘儀にして常識でした。僕は詩を書くとき、この場所にいながらにして、この自分でありながらにして、最も遠い場所、最も遠くて、最も近い自分に出会い直すことができる気がします。
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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?
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かつて人間が「書くもの」だった時代から、機械が「書くもの」になるでしょう。とりわけウェブという機械たちの楽園では、人間が書いたものよりも機械たちが書いた言葉たちですぐに溢れます。無数に自動生成されたゴミのような文章が、生きて身を削る人間のテクストを覆い尽くす日は近いと思います。もしもウェブで人間の言葉が生きる場所があるとすれば、無数の情報たちを遮断する強固な物語と、どこまでも深く潜って検証された歴史的なテクストの堅固さを保証するものだと思います。強いブランドによる物語性の確保と、検証の信頼のある校正・校閲が、不可避になるのではないでしょうか。
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下西風澄 哲学者
1986年生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学後、哲学を中心に講演・執筆活動を行う。写真:©新津保建秀