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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(総監督:庵野秀明、2021年公開)にて、主人公の碇シンジが彼以外の登場人物を物語外へと送り出し、最終的に誰もいない波打ち際にたどり着いたこと。

20年以上にわたり「自意識」の象徴とされてきたキャラクターが、他人の言葉を聞く側に回り、最後には黙ってただ青い空と水平線を見つめていた光景に感銘を覚えた(それは単に「大人になった」とか「成長した」ということではないと思う)。たとえるならウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』の最後の一節、「語りえぬものについては、沈黙せねばならない。」にたどり着いたときの感動に近かった。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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新たな距離を作る、というDISTANCE.mediaの方針には深く共鳴している。そのうえで、距離=速度×時間と考えると、新しい速度と時間を作ることが必要だと思う。

具体的には、強制的にウェブとは別の速度と時間を「読む」際に要求する、書籍(電子でもよい)の出版機能を持つこと。書籍という「形」、ウェブブラウザという「形」、それぞれに適した「読む」体験をデザインすることのできる編集者の存在(編集者ひとりひとりがどちらもできるのが理想)。

北出栞 編集者・ライター

セカイ系同人誌『ferne』主宰。1988年生まれ。神奈川県横浜市出身。幼少期の約4年間をドイツで過ごす。会社員としてウェブメディアの運営に携わりながら、個人として文筆・編集を行う。