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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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週一回、自宅のある東京から京都まで新幹線で通っているんですが、窓からの景色、特に人々が住んでいるであろう家屋やマンション、アパートのある風景を見ると「遠く」を感じます。車でしか行けないところにある工場の寮や、山あいにひっそりと建つ古い民家などを見ると、昔農村社会学者の先生が「日本は本当に隅々まで人が住んでいる国なのですよね」と言っていたのを思い出し、なにかとても自分の生活の遠くにある場のように思えます。一方で、自分の住んでいるところも「日本の隅々」であり、誰かにとっての「遠く」でしかないのだと感じさせてくれます。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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「拡散」が鬱陶しく、「偶然性」に乏しいなと思うところはあります。書き手や編集者が自分の関わった記事を読まれたいと思うのはごく自然な欲求なので仕方ないといえばないのですが、手近な宣伝手段が書き手・作り手のSNSでの拡散中心になってしまうので、結果として個人の有名性とソーシャルネットワーク(人脈)依存で記事が読まれるようなところがあり、そこにげんなりしているかもしれません。結果としてクリエーターの有名志向、人脈志向を強めてしまうので、何を見てもいつメンばっかりという感じもします。偶然に出会ったものとの面白い出会いみたいなものは、ウェブメディアだと減っているように思いますが、構造上仕方ないのでしょうか。

富永京子 社会学者

立命館大学准教授、シノドス国際社会動向研究所 理事。1986年生まれ。社会運動論を専門とし、閉鎖的・排他的にならないような社会運動の可能性を研究している。