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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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私をこれまで最も遠くへ誘ってくれたのは、自分とは異なるDISTANCEを持っている人達、自分を魅了した人達の「考え方」であったと思います。DISTANCEという言葉は、現在の自分とは異なる存在や時空間を繋げる2つ以上の点からなる線のイメージを想像させます。作品から感じられる、ワークショップから体験できる、文書から伝わる、議論の中から生まれてくる新たな体験や思想によって、「考え方」は、互いに交差しながら引っ張り合ったり、想像していなかった遠くまで連れて行かれたり、普段は全く見えなかった側面から物事を捉えられるようになり、考え方の広がりや奥深さが出てきます。私とは異なるDISTANCEを持っている人達が、新たな未来を予測し、改めて過去を描き出し、自分とは異なる環境や人への理解をグーンと促してくれる。完全には分かり合えないのを知っていてもずっと遠くをもっと知りたいと思わせてくれる人達がいるので、少しずつ世界が広がり美しくなっている気がします。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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当たり前の内容を書くことになりそうですが。一般のメディアは情報が偏っていたり、客観的でなかったり、いらない心理を煽ったりするのが多かったと思います。それに対して、例えば、『NYTimes』などは、外部の専門家が客観的データや長期間の調査に基づいた分析や議論を繰り広げてわかりやすく伝えるなど、情報のバランス感覚が非常に良いと思います。まずは事実や現状を「ちゃんとわかる」ように手助けしてくれるメディアが欲しいです。次は、新しい視点や考え方を伝えてくれるメディア、それこそ昔の『InterCommunication』などが見せていた2歩3歩先を考えさせつつ、根本的な価値を再考させてくれるメディアが必要です。最後はインタラクティビティ。読者・著者・編集者などを柔軟に繋げる装置があると嬉しいですね。一般人からも投稿ができて編集して追加していくとか。DISTANCE.mediaの挑戦は大変楽しみにしています!

ソン・ヨンア 研究者

法政大学デザイン工学部教授。インタラクションにより変化していく感情体験の理解と新たな価値創出に関する実践的デザインに従事しながら、スタートアップコンサルやメディアアート作品制作も行う。