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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?
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クローゼットの奥は異世界につながっていると信じていた幼少期の頃から、死者や動物、精霊の世界を説いた各国の神話や民間信仰を知るようになった現在に至るまで。いま目に映る人間社会とは異なるレイヤーに存在する「異界」は、いつだってはるか遠いところへと誘ってくれます。
同時に、どれだけテクノロジーが発展しても、突如やってくる自然災害や病を前に、人はただそれを受け入れざるを得ない時がやってきます。異界への想像力は、そうした圧倒的な不条理を受け止め、なおかつそれに抗い生き抜く力としても機能するのだと思います。
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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?
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雑誌カルチャーに憧れて編集業界を志した自分にとって、学生時代に出合った『InterCommunication』はとても刺激的でした。特筆すべきはバックナンバーを辿る面白さ。1992年の創刊から2008年まで、当時の論者たちが発した問いやメッセージは、いまと遜色なく、それどころか議論の停滞した現在以上に先進的な視野に溢れていたように思います。
10年前のメディアといまを同時に読む。そんなことは、このネット時代いかようにも可能性があったはずなのに、昨今のウェブメディアは即時性のあるニュースばかりで、私たちの思考はどんどんとショートタームになっている気がします。100年単位で、過去と未来の思考を行き来できるメディアを目指していきたいです。
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塚田有那 編集者・キュレーター
1987年生まれ。一般社団法人Whole Universe代表理事。「Bound Baw」編集長。2021〜22年、展覧会「END展 あなたの人生の物語」を主催(東急ラヴィエールと共催)。21年より、岩手県遠野市の民俗文化をめぐるカルチャーイベント「遠野巡灯籠木(トオノメグリトロゲ)」を主催。『ART SCIENCE is. アートサイエンスが導く世界の変容』、『RE-END 死から問うテクノロジーと社会』(ビー・エヌ・エヌ)など多数。