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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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私を遠くに誘ったものは近くにあるものだった。

子供の頃、ルーマニアの農家であった祖父母の家の全ては神秘的だと感じていた。祖父が代々受け継いだ土地に、大工でもないのに自分でデザインを考えて美しい家を作った。祖父方の高祖父母が住んでいた小さな家を囲むように増築した。それで玄関から入るとすぐに明るい窓がたくさんある広い部屋があり、奥の壁には薄い緑の古い家の外壁がそのまま使われていた。

家の中に入るともう一つの家があるというイメージは幻想的で、光によって印象が変わり夢の中にいるようだった。それと、家から森がとても近く、葡萄畑、くるみの木、杏の木、桃梅の木、マルメロの木、キャベツ畑、トマトとピーマン畑、虫と動物、季節によっての全ての音と光の中で人間の身体を持っている自分がいた。

さまざまな生き物と植物と自分の身体の区別がどこにあるかわからなくなる感覚が生まれた。自分に近いものが遠く離れるとその距離を身体でどう受け止めるのか知りたくなった。近くにある自然界と家が私を遠くに誘い始めた。もっと世界のことを知るため。遠ければ遠いほど、わかることがあると思って自分が一番遠いところを目指した。それが日本だった。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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これからのウェブメディアに期待することは、社会的弱者、マイノリティ、女性、難民、異国籍、病気を抱える人の声を伝えることである。

有名な作家、エッセイストだけではなく、若手美術家、研究者などいわゆる文章家ではない人に実験的に記事を連載させることを期待しています。読者が身近な他者を知るための第一歩として、有名でない人に光を当てる。そうして、その声なき声に誰かが救われるかもしれないと思います。

イリナ・グリゴレ 人類学者

弘前大学非常勤講師。1984年、ルーマニア生まれ。主な研究テーマは北東北の獅子舞、女性の身体とジェンダーに関する映像人類学的研究。