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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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いま一番強く記憶に残っているのは、ハリネズミの「たるぴ」とともに暮らしたことです。「身近にいるのにみつけられない虫を観察すること」から、「虫を食べる動物と暮らすこと」にかわって、暮らし始めたころが遠からずもぼんやりとしたできごとになって5年半が経ちました。生物として観察するのではなく、作品にすることを目的にするでもなく、ただともに暮らすことで、たるぴはわたしをいままでのたるぴの見方からどんどん離していってくれました。

それは同時に、わたしがこれまで作品にしてきたことから遠ざかることでもあったと思います。遠のくことがなんであるかは言語化できないまま、ひたすらに遠くまで連れてこられ、いまは置き去りにされていますが、それは自分ひとりでは見つめ返せない場所に来ることができたと言えます。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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予想外なつながりだけではなく、個人が個人としてアクセスできるウェブのかたちがあらわれるものになってほしいです。

青柳菜摘 アーティスト

1990年生まれ。あらゆるものを観察する上で、固有の記録メディアにとらわれず、映像を用いたインスタレーション、言葉、物語を扱った作品制作を行うのと並行して、「コ本やhonkbooks」主宰、また「だつお」というアーティスト名でも活動している。写真:wada shintaro