V20-1
作家への5つの質問
2025年2月のd View

- 《New Standard Landscape》2019
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Contents
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Q1 あなたにとっての原風景を教えてください。
親の仕事の関係で出身地の宮城県内で幼い頃に何度か転居をしています。どこが故郷か?と問われると非常に曖昧な状態です。海の近くの病院で生まれ、その後は内陸の郊外で育ちました。私の原風景は小学生から中学生まで過ごした仙台市内の団地と郊外の大きなショッピングモールですが、そのどちらも今は残っておらず、写真も手元にほとんどありません。風景が変わっていくことにとても興味があります。
Q2 あなたをもっとも遠くに誘った作品や体験がありましたら、教えてください。
小学校低学年の時に学校で視聴したアニメーション『風の谷のナウシカ』です。はじめて観た時、情報量の多さにクラクラしたことを覚えています。風の谷のナウシカに限らず、優れたアニメーション作品は観た後に自分の目が影響されて「現実がアニメーションのように見える」ことが自分にはよくあります。すぐ消える一瞬の魔法のような感覚で、とても好きな体験です。
Q3 作家として視界が開けたと感じた作品がありましたら、教えてください。
「New Standard Landscape」というタイトルで発表している近所の新築の住宅を撮った写真作品です。東日本大震災後に近所の空き地に次々と家が建ち、はじめは単なる近所の光景として眺めていましたが、その写真を何度も見返すうち、これは何かが起こりはじめている、と感じ作品としてまとめるに至りました。写真は「現実の表面」を写すものですが、写真を繰り返し見ることで「現実の中身」といえるようなものへも到達することができるのではないか、と思っています。
Q4 今回掲載した作品について、教えてください。
住宅やソーラーパネルなど、今、自分が暮らしている「地方の現実」が写っていると思います。被災地であるとかないとかを越えて、もはやあらゆる土地に同じようなかたちと質感があふれています。日本中のありふれた光景であると共に、自分たちが今どういう時代に生きているのか、それを知る手がかりが写っているのではないか、写っていればいいなと思っています。
Q5 あなたの指針になっている言葉・本などがありましたら教えてください。
写真家、畠山直哉さんの写真集『Underground』です。写真を学んでいた大学生の時に初めて買った写真集です。東京の渋谷川の暗渠に潜り撮影された作品です。「次に何をすればいいかを、自分の撮った写真が教えてくれる時ほど心踊ることはない。幸い僕はそうやって写真に教えられながら、一つの石を蹴るようにして、色々な場所を回ってきた」この言葉ではじまるあとがきがとても好きです。自分も一つの石を蹴るような気持ちで撮影を続けていて、畠山さんの作品からだけでなく、言葉と制作の姿勢からも日々勇気をもらっています。

- かんのさゆり
- 宮城県生まれ。東北芸術工科大学情報デザイン学科映像コース(現 映像学科)卒業。2000年代初頭の大学在学中からデジタルカメラを使用した作品制作を行い、近作では自身の暮らす土地の暫定的で仮設的な風景の撮影を続けている。主な展覧会に「日本の新進作家 vol.21 現在地のまなざし」(東京都写真美術館 2024-2025)、「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2022 The Everyday-魚が水について学ぶ方法-」(東京、2022)、「若手アーティスト支援プログラム Voyage 風景の練習 Practing Landscape」(塩竈市杉村惇美術館 宮城、2021)、「写真の使用法 新たな批評性へ向けて」(東京工芸大学 中野キャンパス3号館ギャラリー 2015)など。2001年からWEBサイト「白い密集」に写真を継続的にアップしている。http://sayurikanno.com