V12-1
作家への5つの質問
2024年6月のd View
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Contents
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Q1 あなたにとっての原風景を教えてください。
子供の頃は空ばかり眺めていました。いつか空を飛びたいなと。そのせいか空を飛ぶ夢をよく見ます。夢の中では空を飛べることが当たり前になっていて、いまでもふと気がつくと飛んでいます。私が育った愛媛県の松山市は日本で最も晴天率の高い地域の一つだそうです。私のデザインやスケッチにおいて、光がとても大切なのはそのせいでしょうか。有機的な曲面をよく使いますが、そこに写り込むことをイメージする景色はいつも青空と緑の木々でした。青空の下でたくさんの小動物と触れ合ったのも、私のデザインの原点になっていると思います。
Q2 あなたをもっとも遠くに誘った作品や体験がありましたら、教えてください。
フリーランスになってすぐの頃(1987)に出会った二人は、30歳になったばかりの私を未来に導いてくれたと思います。一人はコンセプターの坂井直樹さん。彼のプロデュースのもとでデザインしたコンパクトカメラ《O-product》は世界的なヒット商品になりましたが、感性マーケティングとは何か、コンセプトとは何かを学ばせてもらいました。もう一人は同じ頃に出会った当時東京大学の助教授の坂村健さん。彼のTRONプロジェクトをお手伝いし、いくつかのコンセプトモデルをデザインする中で、ワクワクするテクノロジードリームの描き方を教えてもらった気がします。
それからスタッフとして1999年に私のデザイン事務所に参加してくれた田川欣哉くん(現在はtakram代表)。彼とその友人たちのエンジニアリングスキルのおかげで、私自身のテクノロジードリームを実現することができました。同じ頃に出会った千葉工業大学の古田貴之さんもそうです。彼らは現在も続く未来を描くものづくりの大切なパートナーです。
でも、一番導いてくれたのは、学生の頃に出会い、フリーになることをそそのかし、一緒にデザイン事務所を立ち上げ、今でもリーディング・エッジ・デザインの代表である妻です。妻は本来漫画家なのですが、初期の頃からいつも一緒にデザインを考え、私たちの人生設計そのものについても正しい方向に引っ張ってくれました。
Q3 作家として視界が開けたと感じた作品がありましたら、教えてください。
2000年に製作したロボットの《Cyclops》、両手親指キーボード《Tagtype》でしょうか。通常の工業デザインは企業からの依頼で仕事が始まるのですが、この二つは完全に自分達の自主プロジェクトとして制作しました。どちらも東京大学の研究がベースになっています。結果的に《Cyclops》は日本科学未来館や、オーストリアのアルスエレクトロニカ、愛知万博などに展示されました。
Q4 今回掲載した作品について、教えてください。
私にとってデザインは、自分の好奇心と美的感覚を形にしたものです。非常に実用的な製品から、おもちゃとしか思えないプロトタイプまで含まれていますが、根っこは同じだと思います。ワクワクする未来を描く、作ってみる、展示やプレゼンテーションを通じて多くの人に共感してもらえると、たまに製品として社会に広がっていく。
Q5 あなたの指針になっている言葉・本などがありましたら教えてください。
「人は本当に自分が欲しいものを知らない」(スティーブ・ジョブズ)
「未来を予想する最良の方法は発明すること」(アラン・ケイ)
「決断は軽やかに、迷ったら面白そうな方へ」(自分)
でしょうか。
■Information
「未来のかけらーー科学とデザインの実験室」
会期:2024年3月29日〜8月12日(火曜日休館)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
住所:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
URL:https://www.2121designsight.jp/program/future_elements/index.html
展覧会ディレクター:山中俊治
企画:野村 緑(fuRo)、村松 充、阪本 真
グラフィックデザイン:岡本 健(岡本健デザイン事務所)
会場構成:萬代基介(萬代基介建築設計事務所)
テキスト/企画協力:角尾 舞
テクニカルディレクション:古田貴之(fuRo)、杉原 寛、遠藤 豊(LUFTZUG)

- 山中俊治やまなか・しゅんじ
- 1982年東京大学工学部卒。日産自動車でカーデザイナーとなり、1987年に独立。1991年から3年間、東京大学工学部客員助教授を務め、プロトタイプ(試作品)開発の魅力に目覚める。1994年リーディング・エッジ・デザインを設立。2008年より慶應義塾大学教授。2013年より東京大学教授。2023年より東京大学特別教授。デザイナーとして腕時計、乗用車、携帯電話、カメラなど、幅広いプロダクトを世に出しつつ、さまざまな研究者や企業とともに先端技術を取り入れたプロトタイプを発表する活動も行っている。そのひとつ《Tagtype Garage Kit》は、2010年ニューヨーク近代美術館パーマネントコレクションに選定されている。

