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Part1 10のキーワードで知るイソザキ
8.本
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著作リストに挙げられた本を数えあげると、日本国内で出版されたものだけでも、130冊を超える。対談集など共著や、以前に出版したものを再編集した著作も含めての数字ではあるが、それにしてもものすごい数である。広く世界を見渡してみても、磯崎新ほど多くの著作を残した建築家はいないのではないか。
書籍の発行は出版社の依頼があってのことではあろうが、多くの著作を遺すことになったのは、磯崎の意図があってのことだろう。建築家であるにもかかわらず磯崎は、最終的に歴史のうえで残るのは、実際に建てられた建築そのものではなく、模型やドローイングであり、言説であるととらえていたからだ。
執筆した内容も、自らが設計した建築作品の解説にとどまらず、非常に広い範囲に及んでいる。『建築の解体』(1975年)は、海外で活躍する同世代の建築家たちを紹介したもの。全12巻の「建築行脚」シリーズ(1980-92年)は、人類の全歴史から時代ごとに名作建築を選び、写真家の篠山紀信とともに回った記録。『建築における「日本的なもの」』(2003年)など、日本建築についての著作も多い。また、文学者の大江健三郎と大岡信、音楽家の武満徹、哲学者の中村雄二郎、文化人類学者の山口昌男とともに、総合雑誌「へるめす」の編集同人も務めた(1984-94年)。
後進の建築家に磯崎の著作が及ぼした影響もはなはだしい。たとえば、安藤忠雄は磯崎が著した『空間へ』(1971年)について、「当時の建築をやっている若手皆のバイブルでした」(「日経アーキテクチュア」2023年2月23日号)と振り返る。同書については、およそ10歳若い内藤廣も、「建築を学び始めた出発点でこの本に触れることになった。私は磯崎新というミラー・メイズのような始末の悪い迷路に誘い込まれ、以来ここから離脱することばかりを考えて長い道程を歩いてきた」(『内藤廣対談集2 著者解題』2010年)と、その存在の大きさについて語っている。
