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Part1 10のキーワードで知るイソザキ

7.ポストモダン

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    1984年に竣工した《つくばセンタービル》で磯崎新は、古今東西のさまざまな歴史的な建築から引用を行った。外観では、サンクンガーデンはミケランジェロの設計で16世紀に完成したイタリアの《カンピドリオ広場》から、ホールの付け柱はルドゥーの設計で18世紀に完成したフランスの《アルケスナン王立製塩所》から、といった具合。内観では古代ギリシャの建築からロシア・アヴァンギャルドまでが、レリーフとして描かれていたりする。この作品により、磯崎は日本を代表するポストモダニズムの建築家と見なされるようになった。

    続いて手がけた《ロサンゼルス現代美術館》(1986年)では、ヴォールト屋根やピラミッド型のトップライトが歴史的建築からの引用と解釈される。それが純粋幾何学のプラトン立体に由来しているにもかかわらずだ。

    また、《チーム・ディズニー・ビルディング》(1991年)のエントランス・キャノピーは、ミッキーマウスのシルエットがかたどられていた。ポストモダニズムには、建築を高踏的なものから大衆向けにポップ化するという戦略も込められていたが、まさにこれに合致するものと受け止められた。

    70〜80年代にかけて世界の建築界を席けんしたポストモダニズムは、モダニズムの機能主義を脱し、象徴性の復権を図ろうとするものだった。しかし結局のところは、古典建築の断片を表層に貼り付けた、懐古趣味のヒストリシズムとして広まってしまう。磯崎はこれと距離を置こうとし、自分が《つくばセンタービル》で行ったのは、様式の断片を錯乱的に引用することで歴史の無化を狙った「スキゾフレニック・エクレクティック(分裂症的折衷)」なのだと抗弁するが、あとの祭りだった。

    とはいえ、磯崎が近代建築を一貫して批判していたことは論をまたない。真・ポストモダニズムを実践した非・ポストモダニストとでも呼ぶべきか。

    イラスト:宮沢洋
    テキスト:磯達雄


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