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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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離婚に伴う子との別れ。近くにあったものが遠ざかる、遠ざかるとその喪失を感じると共に、遠くにあるものが近づく、近づいてみるとその綻びに気づく、ということを実感しています。例えば、法制度一つをとっても、遠くから見えていたそれと、近くから見えるそれは、似て非なるものでした。距離を取れることの幸せと,悲しみ,その双方を慈しめるメディアとなることを期待しています。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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より広範囲に届けようとする、ないしは、特定の対象に届けようとするがあまり、その場にいない読み(聴き)手に対する想像力が欠けてしまっていること。これは例えば、新聞社のウェブサイトでの有料記事の見せ方や、音楽配信での楽曲のレコメンデーションに如実に現れているように思います。内容を問わずに読める文字数を制限することや、自分と他の人々との履歴からの逸脱をより難しくすることが、果たしてメディアの役割なのか。だからと言って、その想像力をどのようにメディア化できるのか、その答えをいま持ち合わせているわけではないのですが、近くではなく、遠くに、どのように届くのかを共に考えるもの(こと)になれば良いな、と思っています。

城一裕 研究者・アーティスト

九州大学大学院芸術工学研究院准教授。1977年生まれ。音響学とインタラクションデザインを背景に、研究と創作を行っている。写真:©十河英三郎