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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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フランツ・カフカの『変身』。自分のからだの一部、まわりに転がっているもの、日々の心の動きというようなとても「近い」ものについて思いをめぐらせることが、自分がまったく考えたことのないような世界をのぞきみることにつながる。文学作品にそれほど馴染んでいなかった私を文学に誘ってくれた作品のひとつ。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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繰り返しセンスのない文字や写真を見せつける広告、人の目を惹きつけるためだけに考え出されたような見出し、どこかのネットショッピングにどんどん飛ばすリンクの嵐、歯の浮くような美辞麗句ばかりのホームページ。そんな軽薄な商業主義からインターネットの可能性を取り戻すウェブメディアを期待する。

藤原辰史 歴史学者

京都大学人文科学研究所准教授。1976年生まれ。戦争、技術、飢餓、ナチズム、給食といったテーマをめぐる、20世紀の食と農の歴史や思想について研究をしている。