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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?
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大学生のとき、アジア史の授業をはじめて受けたことで、遠いアジアに興味を掻き立てられた。その後シベリア鉄道と船を乗り継ぎ日本へ向かった。高速で移動する飛行機とは違い、ゆっくりした旅に、distanceを肌で感じた。14日間の旅で、明日の通過地はどんなところなのかと、まだ見ぬ地に想いを馳せ、心躍らせた。残念ながら、戦争により現在はこのような経験が難しく、ゆっくりした旅でdistanceを感じる機会が、またさらに少なくなっている。
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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?
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メディアに期待するというよりも、各国の政府にメディア・リテラシーの教育に力を入れることを期待したい。近年、デモクラシーの国でさえ、クリティカル・リーディングやクリティカル・シンキングを教育から排除し、一部の本を図書館から取り除く動きが際立つ。歴史教育で、過去の経験を直視するのではなく、美談ばかりを教え込む。非科学的・反知性主義的な「道徳」の授業を導入・強化し、19世紀半ばの「偉人史観」を再導入している。21世紀の半ばに向かいつつある現在になって、このような19世紀の方法論に基づく教育で、インターネットというジャングルを誤らずに利用することは不可能で、非常に心配だ。
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スヴェン・サーラ 歴史学者
上智大学国際教養学部教授。1968年ドイツ生まれ。歴史学・政治学を専門とし、東アジアの地域統合の歴史、日独の歴史問題、日本の銅像をめぐる政治と歴史などを研究している。