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あなたをこれまで最も遠くへ誘ってくれたもの(こと)はなんですか?

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「もっとも遠くへ誘ってくれた」といえるかどうか定かでないが、「自分を取り巻いている現実らしきもの」がすべてではない、ということを最初に教えてくれたのは、フィクションやノンフィクションの本だった。小学校に入る前から、本は日常生活から別の世界に向かって開かれた窓だった。ページの向こうの、時代も場所も異なるどこかで何か異質なものと出会い、そこで深く息をして、それまで気づかなかった何かを知って、日常に戻る。戻ってきた自分が、以前とは変わっていることも多い。大人になると、芸術鑑賞や旅などほかにもさまざまな窓――ものの見方を変えてくれるもの、日常をより豊かに営めるようにしてくれるもの――が手に入るようになった。さらに年を重ねて、今居る場所に自分で窓を開けられるようになった。山路で、遙か昔に往来していた人々に思いをはせたり、虹を見て、光の屈折が生み出す不思議を思ったり……。そして今は、ひょっとして誰かにとっての窓になれば、と思いながら、他言語の本を日本語にしている。

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既存のウェブメディアに不満を感じること、またこれからのウェブメディアに期待することはなんですか?

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回答なし

冨永星 翻訳家

1955年生まれ。国立国会図書館司書、イタリア大使館のイタリア東方学研究所図書館司書、自由の森学園教員などを経て、数学啓蒙書、児童文学などの翻訳、紹介に従事している。